気まぐれ Art note

洲之内徹が連載した「気まぐれ美術館」に憧れてます。

Booksー「あの頃の軍艦島」

▪️廃墟ではなく、故郷なのです。

2013年5月、長崎を旅したときに今は無人島の軍艦島と呼ばれる端島に渡りました。100%人口の島であるここは、炭鉱が採れるために作られ、経済需要が変わると共に閉山になり、無人島となりました。近年では廃墟ブームで訪れる人が多いようで、2009年には近代産業化遺産群のひとつとして世界遺産暫定リストに追加記載されています。
 
ここで何のインパクトが強かったかというと、廃墟の風景でも訪れる人の多さでもなく、ガイドさんのお話でした。こんなお話をされたと思います。
 
軍艦島のことを語るとき、廃墟ブームや世界遺産などの華々しい話題の影に隠れて、忘れ去られてしまうことがあります。それは、炭鉱の島の労働者のことです。労働者は設備環境の整わない現場で、何十メートルもの高さから海底トンネルに一気に降ろされるところから始まります。ジェットコースターで下にストーンと落ちるような速さです。屈強な男でも気絶する者が多かったそうです。朝から晩まで働き、やっと長い長い階段を昇って地上にあがると、命絶える者もいたそうです。私たちの現在の経済はそういう労働者の元に成り立っていること、軍艦島を訪れる人にそのことを伝えずにいられません。
そして、
この島で生まれ育った人がいること。その人たちは今60代以上になり、ここで生きていたことを語り継ぐことが難しくなりつつあります。ガイドをするとき、その人たちの代弁者となることが使命だと思っています、と。
 
その後、長崎に戻って本屋さんでこの写真集を見つけた時は!

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さっきまで廃墟だった場所で、生活している人たちがいる。「ここが故郷なのです」の言葉がずっと心に残りました。もし私の故郷・佐渡島が無人島になってしまったらどうしようか。そんなことをずっと考えました。この写真集を見るとき、生まれ育ったアイデンティティーを失いたくない、いつもそう思うのです。

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東京に帰ってからもずっと、すぐに長崎に戻ってあのガイドさんのお話を聞き直し、できれば軍艦島で生活していた方と会ってその言葉が失われないようにまとめ、記録しておきたいと、そう思っていました。早くしなければ。私はなにをモタモタしているのか。