気まぐれ Art note

洲之内徹が連載した「気まぐれ美術館」に憧れてます。

ルネサンスとは何か?

もし、あなたが「ルネサンスとは何か?」について原稿を書いてくれと誰かに頼まれたら、なにを書くでしょうか? 経済を中心としたメディチ家の説明から始めるか、華やかな舞台裏の不安定な社会情勢と絶対的権力を語るか、やはりレオナルドやミケランジェロが活躍した芸術の世界か。切り口は様々だと思います。「ルネサンス」という時代は、世紀を超えて私たち現代人の注目を集め続け、日本でも毎年どこかの美術館で展覧会が企画されています。それほど人気を集める「ルネサンス」。しかし、ルネサンスとは何か?を問われて、きちんと答えられる人はそう多くないと思うのです。

f:id:karryart:20150903180356j:plainヴェッキオ宮は16世紀当時もそして今も政治の中心。ここは市庁舎です。豪華だね〜。2階にある「500人広場」はかつてレオナルドとミケランジェロが壁画を描くはずでしたが、世紀の対決は幻に終わりました。現在はヴァザーリの工房が手がけた壁画を見ることができます。間違ってもマジメに働いている市役所室内に迷い込んではいけません(←迷い込んで怒られた人…)。

 
実は、ある本に書いてあった「ルネサンスとは何か?」の記述が、私のバイブルです。それは何人かの著者が分担して西洋美術史のすべてを書いた本で、その中のたった1ページ、104ページに書いてあった文章に心が留まりました。
それは美術史の視点からルネサンスという時代を説明する1ページです。これを読んで、目が醒めるような思いがしたのは私だけでしょうか?
 
◼︎はじめに/ルネサンスとは何か?
「西洋美術の歴史にあってイタリアの1400年代は、初期ルネサンスすなわちルネサンス美術誕生の時代である。ルネサンス(Renaissance)とは、フランス語で再生を意味する言葉であるが、それは同義のイタリア語リナシタに由来する。当時のイタリア人たちは、みずからが再生の時代に生きていることを自覚していたのである。それではこの時代にいったい何が再生したのかと言えば、それは古典古代の文化である。西ローマ帝国が滅亡してよりほぼ一千年が経過したこの時期に、イタリアにおいて、古代ローマ文化そしてローマを介しての古代ギリシャ文化の再発見がなされたのである。
 ルネサンスは、詩人ペトラルカを先駆者として、まず文学の分野において14世紀に始まった。人文主義者たちは古代人の著した書物を探索し、それを正確に読み解くべく努力し、そしてしだいに古代人の目を通して世界を見るようになった。ルネサンスの時代とはこのように、古代の再発見に伴い、人びとのものの見方や価値観に変化の起こった時代なのである。その運動が美術に飛火したのが15世紀であった。(略)
 15世紀初頭にはいまだ芸術の概念は生まれておらず、建築家、彫刻家、画家といった、現在私たちが芸術家と呼ぶような人びとは、中世以来の職人身分に甘んじていた。それがこれよりわずか百年たらずのうちに、彼らのなかに芸術家としての自意識がしだいに芽生えていくことになる。彼らのうちの幾人かは、単なる手わざの職人ならぬ知的活動の従事者としてふるまい、それが作品にも刻みつけられていく。たとえば、画家がみずからの作品に署名し、自画像を描き込むようになるのもこの時代である。よってルネサンスとは、芸術家誕生の時代であるとも言える。ただ、すべての者がそのことに自覚的であったというわけではないし、地域的な偏差も考慮に入れる必要があろう。また芸術ないし芸術家が制度としての確立を見るには、今しばらくの時間が必要である。
 
 さてさきにイタリア人による古代の再発見と記したが、正確に言うならば、それはフィレンツェ人によるものであった。文化において、とりわけ美術の分野において、15世紀前半はフィレンツェの時代である。(略)15世紀前半のフィレンツェにおけるように、短期間に狭い地域で爆発的といってもよいような芸術的革命が行われたことは、史上稀に見ることである。そして幸いなことに現在も、私たちはこの古都を訪れるならば、その偉業を目のあたりにすることができる。
(執筆:京谷啓徳、監修:北澤洋子『西洋美術史』第3章 近世、武蔵野美術大学出版局)
 

f:id:karryart:20150903181427j:plainミケランジェロ広場から見たフィレンツェの街。

 
なーんだ、キミ使ってた教科書やん。
なんて思わないでねん。
教科書に感動したんです。原点です。

f:id:karryart:20150903182156j:plain「幸いなことに現在も、私たちはこの古都を訪れるならば、その偉業を目のあたりにすることができる」

 
それで、「再生の時代に生きていることを自覚していた」人たちというのは、どういう人たちなんだろうか。ルネサンスの本をつくるなら、私は人間味とか人間模様を切り口にしよう! と思ったんです。私たちが憧れ天才とする16世紀の巨匠たちも、1人の人間として悩み苦しみ、喜びがあり、そのなかで作品をつくっていたと思ったから。