気まぐれ Art note

洲之内徹が連載した「気まぐれ美術館」に憧れてます。

博物館研究を読む

▪️平成28 (2016) 年1月30日 博物館研究を読む

博物館研究にあたり、何冊か読んだ本の中からおすすめだと思った本を紹介します。

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★伊藤寿朗著『市民のなかの博物館』

 この本は、最初に読んでおくべきだったなーと思いました。博物館の役割が的確にわかりやすく書かれています。私がこの本を手にとったのは、いろいろな課題を終えた最後の論文のときだったので、悔やまれました。博物館の研究をしようというのだから、博物館史の本はどのくらい出ているのか、研究はどのくらいされているか、最初にざっと調べて、目を通しておくくらいしませんとね……。

私がこの本を読んで痺れた最後の1ページの文章をご紹介しますので、あとは買って読んでください。私には全ページがバイブルとなった1冊でした。

****以下、引用

4 選択肢のない息づまる空間からの解放

「ここ十年ほどの間に開館した博物館の多くは、展示業者による『視聴覚機器を多用した、美しく完成された、しかしメンテナンスの費用が膨大な』展示となっている。それはテーマ展示と二次資料(間接資料)、視聴覚機器を組み合わせた展示方法を特徴としている。その管理され、計算されつくされた展示ストーリーは、しかし一過性の見学を前提として構成されたものである。

 その典型である映像によるQ&A形式の展示は、実際のところ、子どものゲーム以上には活用されてはいない。いかに『親切で、わかりやすく』とも、設定された選択肢以外に判断の余地は全くない、息づまる空間にウンザリとしてしまう。終始受け身であることが強制されるストーリーのなかからは、自ら発見し、構想してみるという、達成感や充実感は生まれにくい。そのため再度訪ねる意欲も湧いてこないだろう。

 一過性の利用から継続的な活用へという博物館の利用形態の大きな変化のなかで、少数の完成し、完結された展示は、すでに時代遅れとなってきている。むしろ、入館者自身による、比較検討が可能となるだけの膨大な資料、しかも実物資料の展示が求められているのである。

 観光客を対象とした、一過性の利用に甘んじる博物館は別として、先の第一タイプにみられるような、自己学習能力の育成に必要なのは、むしろ無秩序とも思えるような、資料の集積を示す古典的なカオス型展示である。とくに、入館者を受け身の態度に固定してしまう、視聴覚機器の乱用は避けなければならない。

 博物館における、人びとと資料の”出合い”のかたちはさまざまであり、その幅を許容する展示の豊かさが求められている。人びとが自分のなかにある無意識の部分と出合うこと、つまり”気づく”ということは、あまりにも内面的な、そして主体的な行為なわけでもある。

 博物館の持っている知識を、人びとに教授するという啓蒙主義は、受け身の社会では、今後とも人びとの人気を博すことだろう。内面的葛藤を避けた、楽な享受だからである。しかし、これでは市民の自己教育力は育たない。博物館という公共機関には、それに必要な”場と階段づくり”が求められているといえよう。博物館はディズニーランドではない。」

伊藤寿朗『市民のなかの博物館』吉川弘文館 平成5年4月10日 P175-177

 

締めくくり方が、かっこええですよ。ビシッとしてて。

 続いて下記は、「収集の姿勢」と「博物館協議会」という場について。博物館協議会は市民に開かれたものとして存在していることが書かれています。

金山喜昭『地域博物館の提唱 博物館学入門』

*****以下、引用

1 収集

「(1) 博物館で収集する資料は、その性格に則したものを対象にする。収集品は、博物館の基本理念に通じる。」「たとえば三重・財団法人海の博物館の理念は、伊勢湾岸・熊野湾岸の海の環境を保全し、漁師の生活文化を後世に伝えることである。かつて民俗学者宮本常一は、設立者の石原円吉に対して、収集資料は良い悪しを考えずに黙って5万点を集めることを目標にするように助言したというが、収集品は伊勢湾岸・熊野湾岸の漁民の生活文化に関連するものである。現在、それらは伊勢・熊野湾岸の漁民の生活文化史上からも貴重な資料として国の有形民俗文化財にも指定されている。

学芸員は、収集にあたり、自分の専門性や関心のある分野だけに限定することなく、住民のニーズを把握することに努めて、見識をもつことが必要である。学芸員の資質により、収集内容は大きく左右される。公立博物館の場合には、学芸員の偏見性を最小限にするために、博物館協議会などのように住民の意見が反映されるような機会を積極的に設けることが求められる。今後学芸員は、必要があれば住民に収集品の目的や理由を説明することになるだろう。」

金山喜昭『地域博物館の提唱 博物館学入門』慶友社 P111

 

 

 こちらの本は実はムサビの某学科に入ると配られる教科書なんですけれど、書籍化されて本屋さんでも買えるはずです。

神野善治監修『ミュージアムと生涯学習』武蔵野美術出版局

特に神野先生のページは重要です。これもこの先度々読み返すバイブルだなぁと思います。写真は本の中のポール・ラングランのページ。ラングランは1965年にパリ本部で開催された、ユネスコ国際連合教育科学文化機関)の「成人教育推進国際委員会」で初めて「生涯学習」の理念を提示した人です。

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ラングランも読まなきゃ! 昭和35(1960)年にユネスコ総会で採択された「博物館をあらゆる人に開放する最も有効な方法に関する勧告」、ぜひ読んでください。平成27(2015)年11月17日の第38回総会において、博物館に関する新しい勧告が採択されたとのことで、早く日本語訳が読みたいものです!!!!!!!

超基本となりますが、昭和26(1950)年に制定された「博物館法」、博物館法は昭和24(1949)年に制定された「社会教育法」の精神に基づいており、社会教育法は「教育基本法」の精神に則って制定されています。ここ大事!ですよね。

 

締めくくりは、私にとって大切なこの名言で。

「この博物館は宮本常一が『郷土にあって郷土の生活文化を考える場がなければ、郷土はいつまでたっても良くならない』という言葉を受け」「ほんの数人の人々が情熱を傾け続けた成果がこの小木博物館にあり、そして町造りへ育っている。博物館は大切にしたい小さな人の輪のベースキャンプなのである。」

『宿根木の町並みと民家Ⅱ』佐渡郡小木町